医療の「翻訳家」を目指して【市川衛】

医療・健康の難しい話を、もっとやさしく、もっと深く。

女性医師は迷惑な存在なのか?

8月末に公開した記事が

ヤフー!Japan個人のMVA(月間優秀記事)をいただきました。

news.yahoo.co.jp

 

ありがたいなあ。。。。

「こんなに心を込めて書いても、きっと読まれないんだろうなあ・・・

ひとりでも多くの人に届きますように」と思って公開ボタンを押した記事なので

 

そんな驚きの中で、つい熱くなって書いた

受賞コメントがこちらです

誰かを声高に批判したり、自分の考えを押し付けたりするのではなく、読んだ人がそれぞれに何かを感じて、前向きな議論に進むお手伝いになるような記事をずっと書きたいと思っていました。

 

入試不正のニュースが話題となっているタイミングで、わかりにくい部分もある本記事が多くの人に読まれたことに、驚きと感謝の念を抱いています。

 

SNSでこの記事を論評してくださっているコメントをひとつひとつ拝読し、もしかしたら、ほんのほんの少しだけですが、この問題に対し前向きな議論が起きるお役に立てたのではないかと感じています(幻想かもしれませんが)。

 

時差にもかかわらずドイツからインタビューを受け、内容確認にも真摯に対応してくださった岡本真希さんに心からの感謝をささげます。本当にありがとうございました。

 

せっかく受賞したのに、なんでそんな卑屈なの??

 

って編集者さんにも言われてしまったけれど

 

そういう人間なので仕方がない

 

まだご一読いただいていない方がいらしたら

どうかご一読くださいませ

 

news.yahoo.co.jp

むずかしいことをやさしく、ふかく、まじめに、ゆかいに

台風のスキをついて、那覇で「睡眠負債」をテーマに講演してきました。

 

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 睡眠の大切さや、日々の生活がちょっと豊かになるTips、笑いも出て盛り上がってよかった。。。

 

終わって国際通りを歩いていたら、「お話聞きました!」とわざわざ声をかけてくれる人までいて、至福であります

 

偉そうに難しげなことをお話しすることも増えたけど、やっぱり自分が目指したいのは「むずかしいことをやさしく、ふかく、まじめに、ゆかいに」お伝えできるようになることなんだと改めて実感。

 

実現に動いてくださったみなさま、そして何より、聞いてくださったみなさまに心から感謝。このネタは身近だし汎用性があると思うので、これからも機会があればお話ししていきたい。。。

 

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「伝える」仕事の奇跡と責任について

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今日は以前、お仕事で取材させていただいた企業さんの技術展覧会にお邪魔してきました。

 

番組と記事でご紹介したことがきっかけになり、問い合わせが殺到したことで、展覧会が企画されたのだそうです。

 

会場には日本有数の大企業から、海外の企業まで1000人近いご担当者が参加されて、熱心に技術の説明に耳を傾けていらっしゃいました。まだ生まれたばかりの技術ですが、もしかすると日本はおろか世界に出ていき、社会を変えていくのかもしれない、と思わされる熱気が漂っていました。

 

「このアイデアは、世に広めるべきだ」

 

わたしは何も生み出さない、「伝える」だけの立場の人間ですが、そう心から思ったときに、奇跡のようなことが起きることがあるんですね。
(残念ながら、力及ばず失敗することのほうが多いのですけれど。。。)

 

またこういう奇跡のような瞬間に出会えたらいいな。

 

そのためにも、アイデアを生み育て来られた人たちと時間をかけて議論することや、どうすればその本質が伝えられるかを死ぬ気で考えるような、ついつい忘れてしまいがちな丁寧さを大切にしていけるようがんばろう

 

と深夜にエモい独りごと投稿申し訳ございません。

 

超音波で認知症を改善する?治験開始の新たな治療法の論文を読んでみた

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本日、こんなニュースが話題になりました。

 認知症、超音波で進行抑える 東北大が治験へ


 東北大学の下川宏明教授らは19日、超音波を使い認知症の進行を遅らせることを目指す医師主導の臨床試験(治験)を6月中にも始めると発表した。患者の頭部に超音波を当てて、原因となるたんぱく質がたまりにくくする。認知症を超音波で治療する治験は初めてという。

 治験は軽度の「アルツハイマー認知症」と、その前段階にあたる軽度認知障害の患者を対象にする。まず東北大病院で50~89歳の5人に対し、低い出力で超音波をあてて安全性を確認。その後40人規模に拡大し、1年半かけて効き目も確かめる。

  「超音波でアルツハイマー病治療」というのは恥ずかしながら初耳だったので、関連する論文がないか探して見ると、下記の論文が無料公開されていました。

Whole-brain low-intensity pulsed ultrasound therapy markedly improves cognitive dysfunctions in mouse models of dementia - Crucial roles of endothelial nitric oxide synthase.
Eguchi K et al. Brain Stimul. 2018 May 22. pii: S1935-861X(18)30159-1. 

ハイライトとしてまとめられていたのは次の5点

  1. 脳全体に低強度パルス超音波(LIPU:low-intensity pulsed ultrasound)を使った治療を行うことで、認知症の2種類(★)のモデルマウス(人為的に認知症のような状態を再現したマウス)において有効で、かつ安全上の問題がなかった。
  2. LIPUSは、血管性認知症のマウスモデルにおいて血管新生およびOPC発生を増強した。
  3. LIPUSは、アルツハイマー病のマウスモデルにおいて血管新生を増強し、Aβを減少させた。
  4. 血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)は、2種類のモデルマウスにおけるLIPUSの有益な効果に重要な役割を果たしていると考えられる。
  5. 脳全体に対するLIPUS療法は、ヒトにおける認知症の新しい戦略である可能性がある。
★2種類・・・脳血管性認知症モデルと、アルツハイマー認知症モデル
 
低強度パルス超音波(LIPU:low-intensity pulsed ultrasound)とは
現在、診断などに用いられている超音波装置を使用。中心波長?= 1.875MHz; パルス繰返し周波数= 6.0kHz; サイクル数= 32(17-μsバースト長)、空間ピーク時間平均強度= 99mW / cm2
超音波ビームは、扇形のプローブから送達され、超音波を脳全体に適用するために9cmに集束された。 脳組織の各深さにおける超音波ビームの幅は、3.6〜4.0mmの範囲であった。
(注)このへん全く詳しくないので、単に直訳しただけです。。。

論文を斜め読みして印象に残ったこと

※LIPU治療をマウスに行ったところ、血流の改善や一部のグリア細胞の増加などが観察された
※しかしeNOS(血管内皮型一酸化窒素合成酵素)ノックアウトマウスでは効果は見られなかった
 つまりメカニズムとして、
LIPU照射→eNOSのアップレギュレート→血流の改善やグリア細胞の増加→認知機能の改善
という可能性が考えられるということか。eNOSはNOの産生を通じて血管内皮機能の改善に役立つことはよく知られているが、論文によれば、グリア細胞との関連や海馬における長期記憶との関連も指摘されているとのこと。それは初耳。面白い。特定の周波数の超音波をあてることが、なぜeNOSのアップレギュレートにつながるのかは知りたいなあ。もうすこし関連の論文も読んでみよう。

個人的な感想

 血流の改善は確かに脳内環境に良い影響が出る気がするし、超音波は薬剤に比べれば安価、ということで日本発の期待できる治療法になる可能性を感じる。
 ただ純粋な疑問として、eNOSがポイントだとすれば、単に「運動」するだけでも良いんでないか?ということ。実際に定期的な運動習慣に、認知症の予防効果がるとするエビデンスは蓄積している。脳血管のeNOSを選択的にアップレギュレートできることで効果が高いという意義や、何らかの事情で運動ができない人の助けになる、という意義があるということなのかな。。。 
 
 いずれにせよ、ユニークなメカニズムに着目して有望な実験結果を積み重ね、治験までたどり着いたことは素晴らしい。正直、有効性を示す結果が人間で出るかどうかは予断を許さない部分があるとは思いますが、真摯に研究を続けられる皆様に、敬服の意を表します。
 認知症を抱えたり、そのリスクが高い人の救いに1mmでもなりますように。
 
※勉強&忘備録のため読んだ論文をブログに書いていこうと思います。内容に誤りや誤解がございましたらぜひご指摘くださいませm(_ _)m

認知症を抱える方や周囲の方をささえるテクノロジーとは

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モデレーターを務めたHealth2.0のセッションを記事化していただきました。よかったらご一読くださいませ。

認知症を抱える方、ささえる方、それを包む社会全体に対して何ができるか、情熱をもって取り組まれている人たちと話し合えた時間、楽しかったなあ。

セッションをまとめる一言。いつも悩みます。
当たり前すぎる!と思われるかもしれませんが、率直に胸の中に生まれた印象を言葉にしました。

『サービスを作る際に、認知症の「症状」に最適化するのではなく、受ける方がそのサービスを使いたいと思うか、その人のお役に本当に立つのか?を考えていくことが大事だと感じました。』

healthtechplus.medpeer.co.jp

 

書籍発売のお知らせ

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お。。。もうアマゾンに出ていた!
4月13日、共著した新書が発売になります。
去年取材した「睡眠負債」の内容をまとめたものです。

 

「寝るって大事」


なんて誰でも知っているけれど、仕事や介護や子育てなど、眠れない「理由」を持っている方はたくさんいます。

 

だからこそ、つらい人を思いやったり、助け合うような空気が生まれることにちょっとでもお役に立てば。。。という思いでスタッフ一同がんばりました。

 

番組ではご紹介しきれなかったデータや研究成果を詰め込んでいます。良かったらお手に取ってみてください。

 

honto.jp

 

アマゾンのリンクはこちら

 

番組HPはこちら

www.nhk.or.jp

 

【お知らせ】1月の振り返り&2月出版&イベントのお知らせ

あれ!いつのまにか1月も末になってしまいました。

 

仕事で新しいプロジェクトが始まったり、

去年の振り返り記事がずっとトップなのもお恥ずかしい・・・、というわけで、1月執筆の記事や2月予定イベントのお知らせなどまとめておきます

1月に執筆した記事など

Yahoo!Japanニュース 寄稿記事

news.yahoo.co.jp

news.yahoo.co.jp

news.yahoo.co.jp

「幸福」に関しては多くの反響をいただきました。

仮想通貨バブルや経済格差の拡大で「お金と幸せ」について改めて考えようと思う人が増えているのかもしれません。もしご興味があったら、去年執筆した次の記事も読んでみてください

news.yahoo.co.jp

2月の予定

今月は仕事で新プロジェクトが本格化したり、講演・研修が重なったりしたので余り記事などの発信ができませんでしたが、2月にはいくつか出版やイベントが予定されていますのでお知らせします

※出版

2月1日発行

【Gノート】 2018年2月号 Vol.5 No.1

「薬を飲めない、飲まない」問題

処方して終わり、じゃありません!

  • 矢吹 拓/編
  • 定価 2,500円+税
  •  
  • 2018年02月発行予定
  •  
  • B5判
  •  
  • 158ページ
  •  
  • ISBN 978-4-7581-2327-3
  • 販売状況: 注文可能(予約受付中)

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総合診療医向け雑誌「Gノート」で、産婦人科医の柴田綾子さんと共同執筆している連載です。第3回は「患者さんが治療に協力してくれない!」ご興味ある方は注文も可能ですのでよかったら!

※イベント

2月18日 

メディカルジャーナリズム勉強会イベント@Yahoo!Japanロッジ

peatix.com

※現在、満員御礼をいただいております。 

主催しておりますメディカルジャーナリズム勉強会の定期イベントです。

今回は、ウェブライターとして知らぬ者のない巨人・ヨッピーさんと、SEOの第一人者として知られる辻正浩さんをお招きして、去年のGoogle医療健康アップデートで何が起きたか、今後の医療健康情報発信に求められるものは?などを語り合います。

ちなみに、今回初めての取り組みとして「今日から君も発信者だ!」を実施。医療健康情報の発信者としていま注目される書き手から、少人数ワークショップの形で、情報発信のお悩みの相談や読まれる発信のポイントについて聞けるチャンスです!