医療の「翻訳家」を目指して

医療ジャーナリスト 市川衛です。医療・健康の難しい話を、もっとやさしく、もっと深く。

臍帯血(さいたいけつ)無届診療で逮捕 クリニックのHPを見てみた

f:id:mam1kawa:20170827210038p:plain

今日、他人の臍帯血(さいたいけつ)を使った治療を無届で行っていた問題で、臍帯血をクリニックに販売した業者や治療にあたった医師など、6人が逮捕されました。

臍帯血販売業者と医師ら逮捕 無届け治療に関わった容疑:朝日新聞デジタル

 

上記の記事で、実際に治療を行ったクリニックとされているのは「表参道 首藤クリニック」という医療機関です。

 

 

実際、どのような形でこのクリニックは営業を行っていたのか?いま厚労省からの一時業務停止処分を受けているということもあるのかもしれませんが、クリニックのHPはテキストのみのシンプルなものになっていました。

できるだけ薬に頼らず、自己治癒力を高める医療を目指す「表参道首藤クリニック」

 

以前はどうだったのか?過去の全世界のHPをアーカイブしているサービスWayback Machineを使ってみたところ、以前のページはとてもカラフルで、読みやすいものだったことがわかりました。

 

では、いつごろから臍帯血治療を行っていたのでしょうか?

 

アーカイブされている最も古い日付は、2014年7月6日のものです。下記はアーカイブからのキャプチャですが、確かに、臍帯血の治療を行っている旨が記されています。(連絡先、院長の画像などは加工しています。また、赤枠は筆者によるものです)

f:id:mam1kawa:20170827204850p:plain

赤枠で囲った画像をクリックしてみると、その先のページアーカイブされていることがわかりました。そこには下記の記述がありました。

臍帯血幹細胞療法とは、臍帯血に含まれる幹細胞を採取し移植することで、体内の異常個所の修復のみならず、
アンチエイジングに有効であると言われております。
臍帯血幹細胞は点滴で投与します。
臍帯血幹細胞を投与すると
・『がん』などの病気発症リスクの軽減が期待されます。
アンチエイジング効果が期待されます。

(筆者注)上記で主張されている効果は科学的には立証されていません

どうやら、少なくとも臍帯血による治療を実際に行っていたらしいこと、そこに、科学的には確かめられていない効果効能を期待させる記述をしていたことは間違いがないようです。

その後の更新を追っていくと、少なくとも2016年1月11日の段階では、臍帯血治療を行っていることをHPに掲載していたことが確認できました。(下記画像)

f:id:mam1kawa:20170827210038p:plain

 

ところが2016年3月6日段階では、臍帯血治療の項目がなくなっていました。(下記画像)

f:id:mam1kawa:20170827210257p:plain

この間にどんなことが起きたのかはわかりません。その後の更新を見る限り、これを機に臍帯血治療を行っていることがHP上で告知されることはなかったようです。

 

日本の医師法は、医師に対して、効果がきちんと確かめられていない治療でも、きちんと診察・診断すれば「自由診療」として行う裁量を認めています。

ただ逆に言えば、医師の資格さえ持っていれば、(ないとは思いますが)診察・診断したと主張したうえで、単なる水を「治療に効果がある」と100万円で売っても良いということになります。(これは極論ですが、その可能性がないとは言えません)

 

今回は再生医療の安全性に関する法律に抵触していたので問題になりましたが、そもそもの背景にある自由診療」という仕組み自体に関しても、改めて議論すべき時期に来ているのかもしれません。