医療の「翻訳家」を目指して【市川衛】

医療・健康の難しい話を、もっとやさしく、もっと深く。

名もない誰かの真摯な努力が世界を「より良く」する

幼児が被害者となった、痛ましい交通事故がありました。

私もニュースを見るたび、自分が被害者の立場になったらと思って、涙が出そうになります。これを防ぐために、何かができなかったのか?と思います。

でも、それをもって、例えば「幼児は散歩すべきでない」とか「保育園に責任がある」と思わないでほしいと思います。

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出典:平成30年中の交通事故

警察庁の統計では、10年前に比べ、交通事故による死傷者は全体でおよそ半減(56%)しています。
幼児(5-9歳)に限定すれば、ちょうど半分(50%)になっています。

 

「なぜ減っているのか?」については、これと決めつけるほどの明確な研究がありません。きっと、いろんな要因がかかわっているのだと推測できます。

たとえば保育園での引率の際に

「交差点での信号待ちの際はできるだけ車道側からは離れたところにいよう」

という申し合わせがそこかしこで行われたり

 

「事故が多発する交差点には、ガードレールをつけよう」という市民側からの働きかけや、それを実現しようとする行政側の努力があったり

 

「できるだけ事故を起こしにくい、起こしたとしてもより重大な結果を起こしにくいクルマを作ろう」という、開発者の真摯な思いがあったりしたと思うのです。想像にすぎませんが・・・

 

痛ましい事故の報道は、もしかすると「何かできなかったか」という今後の反省に役立つ部分があるのかもしれません。


でも、それがテレビやスマホのニュースを埋め尽くすからと言って、「世の中はより危険になっている」とは思わないでいようと思います。

 

データは、少なくとも交通事故に関して言えば、たった10年前より「より安全」な世の中になっていることを示しています。

 

名もない誰かの、ちょっとずつの真摯な努力のおかげで、世界はより良くなっている。そのことを忘れないでいようと思います。

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