がんの「闘病」という表現を、再定義する
ツイッターのタイムラインに流れてきた投稿を見て知ったのですが、さいきん英語ではがんの「闘病」について
Battle against cancer(がんとの闘い)
ではなく
Cancer journey(がんとの旅路)
という表現を使うようになってきているそうです。
英語で「闘病」や「癌と闘う」等の表現は
— tetsu🇯🇵@てつ太郎🇸🇰 (@serotonin_nin) July 8, 2019
"a battle against cancer"
ですが、最近では
"a cancer journey (旅)"
という表現を使うようにと指導されます。
患者に勝ち負けのストレスを与える事を避ける為と終末期に敗北感を与える事を避ける為です。
癌治療も人生という旅行の一部の様ですね。
確かに、ググるとたくさんヒットします。
例えば2015年のCDCによる動画「カラ:私の、乳がんとの旅路」
闘いは、敗れたら終わり。
旅は、果てに何かを得ることもある。
より深い表現ではないかと思いました。
と、思ってCancer journeyに「がんとの旅路」と和訳を付けてFBでポストしたら…
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ぶっちゃけ「ダサイ!」というご指摘を複数の当事者・経験者からいただきまして(泣)
たしかにそうだなあと反省した次第です
自分が当事者だとして「わたし、がんと旅してます」なんて、ちょっと気恥ずかしくて言えないよね
というわけで、まずはCancer journeyについての勉強開始
BMJ Supportive & Palliative Careのこの論文は、経緯がまとまっていて読みやすく、流れをある程度つかむことができました。
Cancer journeyはイギリス発祥の表現
がんに対して「闘い」に代えて「旅」というメタファーを用いるようになったのは2007年の英NHSによる「Cancer Reform Strategy」が嚆矢とのこと。
がんに対して「闘う」という意識が強すぎると良くないのでは、という議論から出てきた動きだという。その後、英国のがんに対する公的な文章では、Journeyを用いるようになっているそうです。
一方、似た言葉に「Patient Journey」というものがあります。
ちょっと資料を調べた範囲では、マーケティング界隈のいわゆる「カスタマージャーニー」の病院版として米国などを中心に用いられているようです。
医療サービス提供者側が、どうしたら患者(ユーザー)のエンゲージメントを高められるか?という目線で用いられていることが多いように感じました。
つまりCancer journeyとPatient journeyはちょっと別物としてとらえたほうがよさそうだ、というのが現時点の私の理解です。
なお上記リンクの研究(2015年)は、当事者と医療者がオンラインで書いている文章を対象に、がんに対し「闘い」と「旅」というメタファーがどのように用いられているかを調べたものです。
結論としては、「闘い」をポジティブな意味で使うケースもあるし、「旅」をネガティブな意味で使うこともある。「旅」は良くて「闘い」はダメだ、と短絡的に「言葉狩り」してはならないのでは?という主張
4年前の時点でここまで議論が進んでいたとは。。。
いまさら知った自分、不勉強にもほどがあるぜ
がんとの「闘い」ではないことばを見つけたい
「闘い」ではない、日本の文化や感じ方にも合う、新しい良い感じのことばってないのでしょうか。
がんでも、認知症でも、慢性の痛みでも、精神的なお悩みでも。付き合っていかざるを得ない状態って、「闘う」とはちょっとちがうイメージがあったほうが、当事者も家族も支援者も医療者も、ちょっとラクになれるんじゃないかと思うわけです。
ダサくない感じの、みんながついつい使ってみよう!って思える感じのことば
足りないなりに頭ひねって考えようと思いますが、「こんな感じのほうが良いんじゃないか」っていうものがあったら、思い付きでいいので教えてください。