医療の「翻訳家」を目指して【市川衛】

医療・健康の難しい話を、もっとやさしく、もっと深く。

「空気を作る」と「バースデー・ドネーション」 そしてこれまでとこれからの数年について

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私事ですが10月13日(日) 42歳になりました。

 

誕生日よりなにより、台風19号で被害を受けた方が心配で、ついついニュースから目が離せません。相次ぐ川の氾濫の情報を見るたび胸が痛みます。どうかまずは、心と体の健康を大切に。わたしも、できることを支援していこうと思います。

 

さて、42歳を迎えた夜は、そんな嵐の夜でした。

雨風が窓にあたる不気味な音を聴きながら、明かりを消した部屋の中で、つらつらと考え事をしていました。

 

42とは「しに」とも読める縁起でもない年のような気もしつつ・・・良く考えたら、就職してそろそろ20年にもなるんですね。

 

なかなか寝付けず冴えていく頭の中で、自分がこれまでやってきたことを振り返ったり、これからの数年、テーマとしていきたいことを考えたりしたのですが、この記事では、その内容について共有できればと思います。

 

最後には「良かったら誕生日プレゼントください!!」というあつかましいお願いもあるのですけれど、良かったら最後まで読んでやってください。

 

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ほぼ20年前、テレビ局にディレクターとして入局ほやほや、いちおう真剣に研修をうけているわたしです。若ええええええ

 

ずいぶんカメラが古いのが印象的。考えてみれば、たった20年前、インターネットなんて静止画1枚見るために何分も待つのは当たりまえでした。

 

電話はPHSが主流で、写真は「写ルンです」でコンビニや写真屋さんに持ち込んで現像してもらうのが普通だったのだから、人類の進歩ってすごい。

 

一方で自分自身の進歩はというと、20年前に思い描いていた良い意味でのオッサンというか、「成熟して他人の目を気にせず、迷いなき日々を過ごしている」という自分では全くなく

 

週に一度はリアルに怒られたり、心を込めたつもりのSNSのメッセージを軽く無視されたりして、しゅんとしてばっかりなメンタルの弱さを抱えております。情けなし。。。

 

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現在のわたし(あいちトリエンナーレ会場にて)

(外見上おっさん化したな、という指摘には同意します)

「医療の翻訳家」という言葉に込めたもの

で、誕生日を迎えた夜の思考に戻ります。メインのテーマは「自分は今後数年で、何をしたいのか」ということでした。

 

ちょっと振りかぶった言い方をするならば、自らの「役割」をどんなことに設定するか、ということです。

 

これまで数年間の自分のひそかなテーマは、『医療の「翻訳家」を目指す』というものでした。そう、このブログの題名にもしていますね。

 

『医療の「翻訳家」』という単語は、3年半くらい前にYahoo!個人のオーサーとして記事を書き始めるにあたり、編集者さんから「ページに題名をつけよ」と言われて考えていた時に、ふと降りてきたものです。

 

それまで「お前の肩書は何だ」と聞かれたら何も考えず「テレビ・ディレクターです」と答えてきました。本業ですから、当たり前ですね。

 

ただ、よくよく考えると、それは「職業」であって、なんというか自分で選び取ったものではないわけです。同じようにテレビ・ディレクターと名乗っている人は世間にものすごくたくさんいて、ともすればそのなかに埋没してしまいそうな危機感も覚えていました。

 

そこで、どうせだから自分で自分にいちばんぴったりくる、オンリーワンの肩書を考えてみよう!と思い至りました。

 

それを考えるにあたり、まずしたのは、仕事や仕事外の時間を含めて、「自分がしたいこと」をシンプルに1文にまとめること。(わたしのように人生に迷いがちなかたには、これ、お勧めです)

 

うんうん頭を捻って考えた結果できた1文が、こちら

 

「医療や健康など、難しかったり誤解されたりしがちな情報を、上手に伝えることによって、伝えられた人の生活が1mmでも良くなること」

 

この文を読みながら、さて、自分につけたい自分の肩書とは何かを考えてみると。。。

 

どうやら、ディレクターとかジャーナリストとかいうイメージとはちょっと違うようです。よくよく考えると、むしろ「翻訳」という作業に近いものなのかもしれない。

 

翻訳家というのはどうだろう。

 

でも、いわゆる翻訳を生業にしている、書籍の翻訳家や通訳のかたと勘違いされては困るから…カギカッコをつけてみたらいいんじゃない?

 

というわけで出来上がったのが 医療の「翻訳家」 という肩書です。

 

そして自分で作った肩書を自分で名乗るという、まあよくもそんな恥ずかしいことを…ということをコソコソっと始めたわけですね。

 

有難いことにそれを名乗ることで、面と向かってバカにされた経験はこれまでにありません(SNSとかではたまにありますけどね)。最近では講演やイベントなどの場で、初対面の方から「この肩書、好きなんです!」というお言葉まで頂くようになり…。有難いなあ…。

 

(なお矛盾するようですが、わたしは肩書に「こだわり」は持っておりません。取材や講演などでは「ディレクター」や「ジャーナリスト」と名乗ることもあります。その場においてコミュニケーションをスムーズに進めることが一番大事なので。コミュニケーションに支障がないときは、自分の使いたい肩書を名乗る、ということです)

 

さて、このように「医療の『翻訳家』」というこっぱずかしい肩書を名乗り始めてしまった以上、がんばるしかありません。

 

「したいこと」が実現できるように、ちょっとでも自分の「できること」を広げる

 

「取材のスキルを高める」ために、いろんな文献を読んだり学会に参加したりするのはもちろん、「発表できる「場」を増やす」ために、テレビ番組やネット、さらには書籍など回ってきた打席で出来るだけ結果を出すように心がける。そして「媒体ごとに分かりやすく伝わるようにするノウハウを学ぶ/開発する」

 

そんなことを自分なりに続けてきました。

 

もちろん上記のようなことはどこかで「これで完璧」となるものではないので、これから一生かかってもやり続けることではありますが、積み重ねの結果というか、自分オンリーワンの肩書を名乗っても、「嘲笑される」ことは、とりあえずは無くなってきたかもしれん。。。

 

というところまで考えたところで、「では、次の3年で何をテーマにしようか?」と自然に思考が移りました。

「やさしい医療情報」と「空気を作る」

 そういえば先日、とあるイベントに参加したんですね

withnews-medical-sns.peatix.com

 

いま、SNSを活用した医療健康情報の発信でインフルエンサーとなっている大須賀先生、けいゆう先生、ほむほむ先生、ヤンデル先生などが登壇。

 

さらには編集者のたらればさん。そして尊敬する友人の水野梓さんと朽木誠一郎さんが司会をするという、とんでもない我得イベントだったわけです。

 

会場の様子を伝えるハッシュタグ #やさしい医療情報 はなんと、国内のトレンド入り!

どんな会だったかは、ヤンデル先生のまとめられた参加者・登壇者のツイートを追うとリアルに実感できると思います。

togetter.com

 

詳しい内容は、各ツイートそして登壇者の皆様がまとめてくださっているブログなどをお読みいただくとして…

 

個人的にぐっと来たのは、ヤンデルさんの発表にあった、「<医療情報を多くの人に使ってもらうために必要なものリスト>」でした。

 

次のブログにその詳細がまとめられていますので、ここではその項目だけ。

博物館に知恵をならべる

知恵はきちんと分類しよう

たぶんシステムはテクノロジーによってどんどん進化していく

でもAIは情報の情を深化してくれないことに注意しよう

ヘッドコーチ目線を持ったあとにフィールドでプレイしよう

観客を煽ろう

お互いの強みを知ろう

旗を見ていたい

note.mu

 

ははーーー、と、深く頷かされましたよ。わたしがなんとなく感じていたことを見事に、そして深く言語化していただいたと感激。

 

で、光栄にもヤンデルさんの上記Noteでも引用していただいたのですが、

私はメディアの役割として「空気を作る」ということがあると思っています。

 

すごく平たい言葉でいえば、「○○がクールだ」という意識を社会に醸成していくこと。

 

そういえば今回の台風の直前、計画運休や企業の休業を歓迎する空気が支配的でしたよね。

 

以前は台風だってなんだって仕事にいくのがクールだったのに、今回の台風では「安全をとって休むことがクール」、っていう風に明らかに「空気」が変わっていました。

 

もちろん、かけがえのない使命がある人が、危険を熟知したうえで仕事に赴くことは尊いことです。

 

しかし、別に今日わざわざ行かなくたっていいよね、という状況にある人が、上司の命令とか職場への忖度とか、「空気に絡め取られて」危険な地に赴く、という事態を防ぐことには繋がったと思うわけです。

 

明らかに「空気」というものは存在し、そして日本においては、個人の行動が結構それで変わることはあるんじゃないか。

 

いま誰かに伝えるべきアイデアや、命を救える情報があったとして。

 

これまでは、それを「自分で伝える」ことを大事だと思ってきましたが、それはもちろんするとして、それが「クールである」という空気を作ることは、もしかしたら大事なことかもしれんと思うようになりました。

 

その「空気」があることで、それをしようとする人が増える。思いを持つ人が、勇気を持って言い出せるようになる。クールだと思われることで、ボランティア的にかけがえのない取り組みをしている人が、相応な対価を受け取ることもできるかもしれない。

 

そしてそれは、この3年間で有り難くもいろいろなレイヤーの人に知り合いが増え、そして医療の専門家ではないけれど、メディアの専門家としてのトレーニングを受けた自分には力になれる部分かもしれないと思うのです。

 

だから僕は、これからの3年間はちょっと意識して、その役割を担える自分になることを目指していけないかと考えています。

 

・メディア業界の中で、同じ思いをもって取り組んでくれる人増えるよう頑張ります。

最低限の科学知識を持って誰かのために情報発信することをクールだと思ってくれる人が増えるように活動します。

 

・「応援団力」を高めます。

素敵なアイデアや熱意を持って活動している人について、業界を問わず見返りを求めずに応援します。

 

・いま仲間とともに進めている「メディカルジャーナリズム勉強会」を継続し発展させます。

思いを持つもの同士が、楽しく安心して学びあえ、たくらみあえるコミュニティとしていきます。

 

・毎月、何らかの団体に寄付をします。

頑張る誰かを応援することは決して恥ずかしいことではなく、むしろクールで楽しいことだと感じられる空気を作ります。

 

バースデー・ドネーションにご協力ください

というわけで、最後にお願いです。

 

早速ですが、「毎月何らかの寄付をします」を実現したい。。。

 

最近知ったのですが、バースデー・ドネーションというものがあるんですね。

 

つまり「自分の誕生日に友人や知人からお祝いの代わりに支援したい団体のために寄付を募る」ということのようです。

 

そこでFBで『バースデー・ドネーションで、どこかお勧めのところご存知の方いらっしゃいませんでしょうか?「うちに寄付してほしい」というお申し出も大歓迎です』とお聞きしたところ、たくさんの候補をいただきました。

 

そのなかで今回は、独断と偏見で、次の2団体への寄付を募ろうと思います。

 

syncable.biz

西口洋平さんが主宰されている、がんのパパママのためのコミュニティサービス「キャンサーペアレンツ(cancer-parents.com)」です。その活動をもっと前進させるために、寄付をお願いされています。

 

syncable.biz

轟浩美さんが運営されている、NPO法人希望の会」さんです。治療法が確立されておらず、情報も少ない難治性がん、スキルス胃がんの患者家族会です。

胃がん患者、轟哲也さんが2015年に設立され、難治性がんゆえに治療に苦慮し、さらに就労継続も厳しい患者家族の現状を鑑み、設立以来、会費をいただかずに運営されているそうです。

 

どちらも、ご面識をいただいている人たちが真摯に取り組んでおられる、ということで寄付先に選ばせていただきました。(もちろんですが、支援を募る以上、わたし自身も飲み会何度か分の支援をさせていただきました(^^))

 

もし、市川の普段の活動にちょっと興味をもってくださったかたがいらしたら、よかったら誕生日プレゼントがわりに、寄付をお願いします。

 

もし寄付してくださったかたがいらしたら、そっとメッセージなどで教えてください。こんど一緒に飲んだとき、一杯おごらせていただきます!

 

というわけでエモさにまみれた長文失礼いたしました。最後まで読んでくださったあなたに、心からの感謝をささげます。本当にありがとう。

 

新しい1年も、みなさまと一緒に幸せなものにできますように。

これからもよろしくお願いいたします

 

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自分でケーキの画像を貼ってんじゃねえよw、という憐れみのご指摘は甘んじて受けます