医療の「翻訳家」を目指して【市川衛】

医療・健康の難しい話を、もっとやさしく、もっと深く。

ドラマ&ドキュメント「不要不急の銀河」

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昨日放送された
ドラマ&ドキュメント「不要不急の銀河」

https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2020072321089


いやー、すごい番組でしたよ。

 

自分が撮影に関わったことや、制作した組織に属することを100%抜きにして、いまこそ見られるべき番組と思います。

 

井上監督、本当にすごい。あのカットが、こう使われるのか。複雑な文脈を絡めて行って、最後こんな風に気持ちよく開放するのか、そして最後まで声高には語られないメッセージを「感じてもらう」ことへのこだわり。勉強になることばかりです。

 

いま、この事態にもっとも傷ついているのに、もっとも顧みられていない人たちへの「愛」がある。不確かな現実を、それでも生きていかざるを得ないわたしたちへの愛がある。

 

クサいでしょうか。クサいですね。

 

でも、感染対策を徹底するにも、経済を回すにも、その根底に「愛」がなければ、届かないと思うのです。うまくいかないと思うのです。そして愛は、必死で叫ばなければ伝わらないものだと思うのです。

 

番組の最後に、この番組に関わったすべてのスタッフの名前をテロップする粋な演出を見ながら、そんなことを感じました。

 

良かったら見てみてください。
NHKプラスから見逃し配信中です。

スマホやPCから、およそ1週間、見られます。

 

https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2020072321089

 

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#コロナ下の音楽文化を前に進めるプロジェクト

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本日、プレスリリースが出ました


「#コロナ下の音楽文化を前に進めるプロジェクト」

 

全国のクラシックオーケストラや吹奏楽などの団体、医療者や研究者、楽器メーカーなどがタッグを組み、コロナ下で適切な安全管理をしながら、音楽文化を「前に進めていく」ことを目的としたプロジェクトです。

 

NHKは過去培った、可視化技術や人脈を含めたノウハウを用いて協力します。プロジェクトによる検証の過程を報道することで、透明性を高めたり、得られた知見を全国の愛好家や音楽を愛する学生のみなさまが使えるようにしたりすることに役立つかもしれません。

 

(まだ、始まったばかりなので、先は全く見えませんが。)

 

「分断と距離」が目に付く日々です。

 でも、音楽聞いたり、歌ったり楽器演奏したりするときって、それこそ距離を越えて感動を共有できたりするものではないですか。(ぼくはまごうことなき素人なので何の説得力もありませんが)

 

そういう感動を届けられる人たちや、その共有を待ち望んでいる人たちに、お役に立てる取り組みになったらいいなあ。

 

というわけでコツコツがんばります

(そればっかりやね^^)

 

www.classic.or.jp

「科学の言葉」と「感情の言葉」の橋渡し

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【近況報告・長文です】


みなさま、いかがお過ごしですか?

 

私は最近は、いわゆる芸術文化(演劇、ドラマ、オーケストラ、吹奏楽など)の練習や公演をいかに再開していくか、そのガイドライン作りとか、根拠となる実験をどうデザインするかとか、その実験器具をどこから借りてくるのかとか、協力してくれる研究者にどうお声をかけるのかとか、そんなことに仲間と共に日々奔走しています。

 

「ていうかお前、テレビディレクターでしょ?なんでそんなことやっているの?」と言われるかもしれません。

 

いや、もちろんこれらの取り組みはそのうちに、何らかの形でテレビ番組になって人の目に触れることになっています。たぶんね。

しかし確かに、僕が20年前に「テレビ番組のディレクターさん」となんとなくイメージした人とは、ずいぶんかけ離れた立ち位置に来てしまった気がします。

 

何をやっているかと言えば、橋渡しです。

 

事業を主催する側は、少しでも安全に、出来ることを増やしたい気持ちが働きます。だからこそ「これさえすれば大丈夫?」という質問をたくさんしたくなります。そこには不安の気持ちもあります。なので、「感情」の立場にいるといってもいいかもしれません。

 

その質問を受ける専門家は、「これさえすれば大丈夫」ということは存在しないことを知っています。リスクをゼロにすることは、人間が生活をする限り不可能です。なので、「リスクは少ないですが、大丈夫とは言い切れないかもしれません」という正しい言葉を選びたくなります。それが「科学」の立場です。


この2つにはギャップがあります。専門家が「大丈夫とは言い切れないかもしれません」という表現をしたときに、それを聞いた人は「あ、だめなんだ」と思ってしまうかもしれないのです。

 

そんなコミュニケーションのすれ違いの結果、やっていいはずのことができなくなったり、必要がほとんどない過大な対策を実現するための労苦をだれが負担せざるをえなくなったり、逆に、どうしても必要な対策がおろそかにされてしまったりすることが、本当にあるのです。

 

そのコミュニケーションのギャップを埋める「翻訳家」がいたほうが良いのではないだろうか?

 

わたしは、芸術文化の世界ではまごうこともなき「ニワカ野郎」ですし、医療の世界でも、資格もなくちゃんとした専門教育をうけたこともなく、ただただ「合間」でフラフラしてきた人間でしかないのですが、それゆえに不安を抱える人の気持ちも、良かれと思って科学の言葉を発する人の気持ちもわかる部分があります。なので、「橋渡し」という意味では役に立つ部分があるのかもしれないと思うようになりました。

 

演劇とか
ドラマとか
コンサートとか
ライブとか

 

すべての芸術文化は、それが人間として幸せに生きるために必要だから生まれ育まれ引き継がれていったとなんとなく思うんですよね。(ぼくほどの芸術オンチも余りいないと思いますが)

 

この事態において、安全との良いバランスを持って、この文化の営みを止めないため何かをしたいという真摯な志をもつ人たちの間を、橋渡しとなることで前向きにものごとを進めていけたらいいなあ。

 

その結果として音楽に感動したり喜劇に爆笑したり、素敵な演技に共感し涙を流す風景がもどってきたらいいなあと。(当分は、マスクしつつかもしれないですけれど)
というわけで、お目汚し失礼しました。ときたまに投下する、深夜のテンションの投稿

 

スミマセン。

 

まあ、いま自分にできることを、コツコツやっていくよ。一緒にやっていきましょ

新型コロナウイルスと共存する時代のコンテンツ作り

新型コロナウイルスと共存する新しい時代のコンテンツ作り

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出来る範囲で、こつこつと進めています
昨日は事務局やっているONAJapanで専門家会議の武藤香織さんをお呼びして新型コロナ関連ZOOMウェビナー。メディア関係者中心に130人以上の人にお集まりいただきました。

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リアルイベントだと東京でやれば東京の人しか来れないけど、オンラインなら日本全国はもちろんNYやロンドン、カイロにデリーからも応募者があり、人脈作りもできて「あれ?これリアルよりいい部分いろいろあるかも?」とか思った次第です。


ウェビナーのホストは、アンケートやQAのウィンドウを複数確認しつつ登壇者に質問をしていくのでリアルイベントより負荷はかかるけど、事前の準備は少ないのでノウハウさえ蓄積できれば気軽にできるなあと感じます。

考えると、今後の学会や大学の講義において、こうしたスキルが必須になっていくでしょう。コロナの感染状況の推移とはまた別に、今後オンライン化が進んでいくのはもう止めようがないのかもしれません。


学会でわざわざ出張しなくなったり、東大に行くのに東京に引っ越す必要は無くなったりする時代は、すぐそこに来ている。コロナさえ耐えきれば、というのではない大きな転換点がきているのを実感します。

 

 

そして本業でも、この夏に向けて「戦争体験の伝承」の新しい形をVR空間で議論しあうワークショップという、なんだかもうどこへ行くのアナタ?というコンテンツの開発を進めています。後日、番組などの形でみなさまのところへ届けます。

 

最近、コロナのせいで夏の平和学習(沖縄・広島など)に行けない、というお声を聴きます。せっかくの機会を奪われる学生さんたちにとっても、戦争体験を伝えようと取り組み続ける人たちにとっても深刻なことです。

 

そもそも戦後75年を超えて、戦争体験の当事者のかたが少なくなり、若い人の興味が薄れるなど、戦争体験の伝承はいろいろな意味で岐路に差し掛かりつつある部分もあるのかもしれません。

 

だからこそ、制約を逆手にとって、より興味を持って「感じられる」新しい体験を作れたらいいなあと思います。もちろんこれまでの伝承も大事。だけど新しい伝え方も、必要になる。そのために仮想現実はきっと役立つはずなのだ。もちろんオンライン会議も役立つはずなのだ。

 

僕にできることは少しでしかないけど、いま一歩踏み出して新しい「伝える」形を作れれば、どうにかしてコロナ前に「戻ろう」とするよりも、1mmでも前向きな動きにつながっていくはずなのだ。
自信ないけど。やっていくしかないのだ。

 

というわけで、わたしの仮想現実世界でのアバターも作っていただきました。仮想世界での市川も、リアル市川ともどもコツコツやっていきます。

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ーー
キャンペーンの第1弾は、VR(仮想現実)空間でのオンラインワークショップの開催。 全国各地の“すずさん”を発掘しそれぞれの地域で伝えるため、各地の新聞社や博物館、 教育関係者など様々な方たちと「新しい戦争伝承」の可能性についてディスカッションします。後日、放送やHPでその様子をお届けするのでお楽しみに!

www.nhk.or.jp

超過死亡数(率)、という考え方について

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Bloombergがこんな記事を出していました

https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-05-12/tokyo-mortality-tally-shows-no-surge-in-deaths-during-pandemic

 

東京都では3月に超過死亡が確認されなかったか、確認されたとしても欧米諸国と比べると遥かに少なかった件について伝えています。

 

新型コロナウイルスなどの新興感染症に関しては、その死亡者の数を国際的に比較するためには、超過死亡数を使うのが良いと考えられています。

よく毎日のニュースやワイドショーをにぎわす「検査により確認された死者数」は、その国の検査体制がどのくらい整備されているかとか、どんな条件を満たしたときにその感染症による死者とするかなどの要因によって影響を受けます。

一方で、死亡統計(だれかが死んだら死亡届を出す)というのは、単純でありかつ基礎的で重要なデータであるがゆえに、様々な要因による影響を受けにくいと考えられます。なので、いろいろな状況を抱える国同士を比較するには適していると考えられるのです。

で、超過死亡というのは、ざっくりいえば「例年だったらこの季節だとこのくらいの人が亡くなるはずなのに、今年、めっちゃ多かったらおかしくね?」ということです。

たとえば今月、ここ5年くらいの平均の死亡者数より数千数万人単位で多い死亡者がいたとしたら、今年に限って起きた例外的な要因≒新型コロナウイルスによるものと考えていいのじゃないか、ということです。


で、Bloombergの記事は、東京都では3月に超過死亡が確認されなかったか、確認されたとしても欧米諸国と比べると遥かに少なかった件について伝えました。

 

Bloomberg、海外メディアなのに、このスピードでこれだけ科学的に的を射た記事がかけるってのが凄いなあ。僕がマドリードやニューヨークの現状について、こんな端的に現状を示す記事を書けるか、と思うと自信ないです。


「日本では検査数が少ないから、一見感染者の数は少ないけど、謎の死者が続出しているんじゃないの???」とちょい心配になっている方がいらしたら、Google翻訳で読めますのでご一読を。

 

www.bloomberg.com

歴史的イベント:日本感染症学会ウェブセミナー

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しかし改めて思うに
今日の日本感染症学会ウェブセミナーは
歴史的なイベントだった…

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最前線にいる専門家たちが何を考えどんな行動をとっているのか、閉じたコミュニティではなく、広く公開した姿勢に敬服

そして「正しく怖がる」とはこういうことかと実感

非常に厳しい数字も多かった一方、対策を進めている人たちの顔や思いを感じ安心感をもらいました

明日からも自分にできることを着実に続けていこう

伝える職業の端くれとして、こういう情報発信のお手伝いをせねば

 

自分用のメモとしても残しておきたかったツイートをまとめていただきました。感謝。

#感染症学会COVIDウェブセミナー

togetter.com

 

良かったらご一読を

 

“パンデミック”との闘い ~感染拡大は封じ込められるか~

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CDC/ Alissa Eckert, MS; Dan Higgins, MAMS

3月22日放送のNHKスペシャル、担当しております

 

www6.nhk.or.jp

2020年3月22日(日)
午後9時00分~10時00分 NHK総合

 

パンデミックとなった新型コロナウイルス
世界で悲劇がひろがる一方で、渋谷を歩けば盛り場に若者と外国人があふれ、笑顔で酒を酌み交わしている姿が見られます。日本では思ったより患者が増えていないことが安心感を生んでいるのでしょうか。

 

でもそれは、医療や介護、行政の現場にいる人たちの必死の働きに支えられている、非常に危ういバランスなのだと、取材を進めるほどに感じます。実際に特定の地域では、感染爆発につながりかねない兆候も見えてきています。

 

政治の目線で見ると、ともすると死者や感染者はただの数字に見え、まるでシミュレーションゲームを解くように戦略を云々したくなります。一方で現場を取材すると、その数字ひとつひとつが確かな人のいのちだと実感し、マスクやアルコ―ルを求める叫びに心が痛みます。

 

長期化しつつある日々の取材のなかで膨大な情報に触れていると、正直、心のバランスを崩しそうになります。レジリエンス大事。

 

睡眠
栄養
手洗い
必要な場所では必要な感染管理
努めて笑顔でいること



 

とかいってますが、正直な心の声は「明日から世間は3連休か!いいなーー!!」だったりして😊おっといかん

 

これから3日が正念場
気を引き締めてがんばります。
良かったら見てくださいね。

テレビの前にいられなくても、PCスマホで視られます

https://plus.nhk.jp/

 

放送後一週間は見逃し配信もありますよ(^^)