医療の「翻訳家」を目指して【市川衛】

医療・健康の難しい話を、もっとやさしく、もっと深く。

報道実務家フォーラム【医療情報の伝え方 新型コロナ「インフォデミック」に向き合う】

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【4月29日 リアル講座します】

ひさびさ、同じ会場に集まって、議論しませんか!!!

 

いわゆる大型連休の初日となりますが。光栄すぎる機会を頂いてしまいました。
スクープや調査報道を担う実務家たちが、それぞれの知見を共有しあい、社会の役に立つためのスキルを高めあう場の最高峰のひとつ。「報道実務家フォーラム」が3年ぶりのリアル開催を迎えます。

 

なんと・・・、その講座の一つを、わたくしのようなゴミカスが、受け持つことになりました。。。緊張しすぎてやばいです。

 

私の講座は措いておいても、なんと、3日間で50もの講義がリアル&オンラインのハイブリッドで開かれるとのこと。

 

事務局の皆様の努力はいかほどでしょうか。尊敬しかないです。
私の講座の時間と会場は下記です。必死に努めます。良かったらこちらのリンクから、ご応募ご検討ください。

 

j-forum.org

 

ーー
4月29日(金)15:10~16:30
早稲田大学国際会議場井深ホール
医療情報の伝え方 新型コロナ「インフォデミック」に向き合う
講師:市川衛
※オンライン中継も予定されています
ーー

 


ここからは個人的なつぶやきでございます。
いや~、ひさびさに皆に会いたいです。NHKとかメディアとか関係なく、議論したいです。

 

オンライン会議もいいですけれど。

 

やっぱり、ぼくは、真摯に報道に向き合っている人たちと会って議論したい。

 

1ミリでも誰かの役に立つ、取り組みを。
妄想かもしれないけれどワクワクするたくらみを。
語りたいのです。

 

ぼくなんかのくだらない話を聞くのは苦痛かもしれないけれど。
お叱り下さい。そして教えてください。参加させてください。
良かったら一緒に、語りましょ😊

3月24日(木)シンポジウム(参加無料)のお誘い

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突然ですがわたくし、メディカルジャーナリズム勉強会の研究部長として、この1年AMED(日本医療研究開発機構)の研究班に加えていただき、「医学系研究を分かりやすく伝える方法」を調査してきました。

ez2understand.ifi.u-tokyo.ac.jp

 


実は自分的にけっこう意外な発見もありまして。

 

よく「医療健康をわかりやすく伝える」と言った場合、暗に「医師など医療のことを良く知っている専門家が、無知蒙昧な一般の人にかみ砕いて教えてあげる」というニュアンスが含まれがちじゃないですか。

 

いけすかないですね。
けどまあ、そうなんだろうと思いますよね。

 

しかし今回、医学系の研究によく使われている専門用語の理解を調査してみたところ、なんと医師のほうが、一般の人より「誤って」理解している言葉があることが分かりました。

 

ええっ、そんなわけないでしょ!

 

と思った、医療関係者や研究者のみなさま。
そして、医療や健康の研究を役立つように翻訳して伝えて、読者や視聴者、フォロワーの幸せにつなげたいと思っている全ての方へ。

 


ぜひ、どんな内容なのか。

 

昼下がりの90分、無料シンポジウムにお付き合いください。

めちゃ役立つノウハウ満載の内容をお伝えします。
申し込みアドレスはこちらです。

↓↓↓↓

https://ifi.u-tokyo.ac.jp/event/12104/

 

下記詳細であります😊


日程:3月24日(木)14:00–15:30(13:45開場)
※Zoomウェビナーによるオンライン開催

 

定員:500名(定員になり次第、受付を終了します)

 

参加申込:要事前申込(参加無料)。

 

※登録完了後、前日までに招待URLをお送りします。
主催:東京大学

 

※対象
医療健康系の情報発信に関わる下記のような立場の方
・メディア関係者
・医療関係者
・当事者・支援者
・行政担当者
・広報PR関係者
・そのほか、発信を志す全てのみなさま

 

※ちなみに、研究部長ってなんやねん!と思われた方もいるかと思うのですが、メディ勉は実は科研費などを取得することも視野に入れて研究機関としてe-radに登録をしております。その時に私の肩書として便宜的に「研究部長」としたわけです。

 

代表兼研究部長!!
なんというひとり二役感!!
どなたかぜひ、研究部長を引き受けてください😅

総額4億円、若い世代の「働く」を支援する事業を始めます。

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【相変わらずの長文投稿で申し訳ないです。こういうことを言うのは良くないと知りつつ。良かったらシェアしてください】

 

総額4億円、若い世代の「働く」を支援する事業を始めます。

 

コロナの影響が長期化するなかで、働く場を失ったり、仕事を休まざるを得なかったり、働く場を探すことに前向きになれない人が増えています。特に、若い世代にそれが顕著であるというデータが出てきています。

 

私はもう若いとは到底言えない人間ですが、だからこそ、何かできないか。自分にできることを鬱々と考えてたら、この分野で真摯な取り組みを続けてこられた、認定NPO法人・育て上げネットの 工藤 啓 さんと 田中 成幸 さんと一緒に助成事業を創ろう!という話になり、そして、休眠預金活用事業を行う一般社団法人JANPIAさまから資金提供をいただき、助成事業を行えることになりました。本当にありがたいことであります

 

【長期化する「コロナ失職」包括支援】

 

学生・ひとり親家庭・キャリア支援など幅広い分野において、15歳~39歳を対象とする就労支援の取り組みを行う団体に、最大3000万円の助成を行います。

 

人が働くという営みは常に多様で、それが難しくなるシチュエーションも多様です。2年も続くコロナの影響の中で、どうしてもそれが難しくなっている人がいるとしたら、それを何とかしたいと思う人を支援することで、何かができないか。

そう思ってくれる同僚たちと共に、新しい事業を始めることになりました。

 

お願いです。

良かったら以下のリンクを読んでみてください(STUDIOでコツコツつくりました)

fund.readyfor.jp

 

そして、ちょっとでも関係ある活動を行っているかたがいらしたら、NPOでも、一般社団でも、株式会社でも、任意団体でも形は問いません。ぜひ、いったん「いまやりたいこと」と、「それに必要な金額」を記入してお送りください。

すみませんいつも暑苦しい投稿🙏

【長文注意】本日2月1日は・・・!

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こんにちは皆さん。

 

今日2月1日は、私にとって20年勤めたNHKを退職し、READYFOR株式会社に転職して一年となる記念日でした。

 

いやー、色々あったけど、おかげさまで元気にこの日を迎えることができました。

 

せっかくなので、「最近、市川何やってるの?」というところをまとめてご報告しようかと思います。クッソどうでもいい近況報告で、興味持ってくださる方がどれだけいるか不安ですが、つらつら書いていたらクソ長文になってしまいました。

 

お暇なときで結構ですので、よかったら読んでやってくださいませ。

 

目次

①企業人としての活動:READYFOR株式会社 基金開発・公共政策室長
②個人としての活動:医療の「翻訳家」
③団体代表としての活動:一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会

 

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①企業人としての活動:READYFOR株式会社 基金開発・公共政策室長

 

READYFOR株式会社では、いま主に基金事業を担当しています。クラウドファンディングのプラットフォームとして知られる弊社ですが、この2年ほど基金事業に力を入れ、総額およそ15億円ほどの分配に関わってきました。

 

クラウドファンディングが、「何かをしたい人が声を上げ、弊社は資金を集めるお手伝いをする」のに対し、基金事業は、「弊社が『ここに資金を投じたら多くの人の役に立つ』というテーマを設定し、個人や国や公的な組織から資金をお預かりして事業を募集し 、審査を行って資金を提供する」という違いがあります。

 

そしてその資金が適切に使われるよう伴走し、インパクトを評価し、資金を提供してくださった方に報告するところまでを行います。

 

私の「基金開発室長」という役割は、その「テーマ」の設定を行うところにあります。いま悩んでいる人がたくさんいたり、資金が足りないばっかりに十分な支援が届いていない分野がないかをリサーチし、課題を設定し、資金を提供する意思のある方にプレゼンする役割です。

 

おかげさまでこの1年、いくつかの大きな規模の事業を実現することができました。

 

もちろん、クラウドファンディングに関しても、とくに医療分野において深くかかわっています。

 

私のことを見込んで挑戦を相談してくださる方にご対応するほか、その思いを多くの人に知ってもらうために、記者会見やイベントなどに登壇しています。そして命に関わるリスクのある医療分野において、プロジェクトの質を下げないよう、適切な審査を行う仕組みづくりにも関わっています。

 

基金事業やクラファンのほか、最近では「公共政策の提言」にも力を入れています。クラウドファンディングプラットフォームとして、そして基金事業の運営者として多くのNPOや団体様と関わらせていただいている経験を基に、格差が開こうとしているこの日本社会で、どんな取り組みが求められるのかを考え、それを政治や行政の立場にいる方に提案する仕事です。

 

たまたまですが入社1年目の今日、「公共政策室長」という肩書も追加で名乗らせていただくことになりました。まだまだ不勉強ですが、これまで公共メディアで得てきた経験を活かせるよう、2022年も取り組んでいきます。

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②個人としての活動:医療の「翻訳家」

 

転職を期に、『医療の「翻訳家」』としての活動を本格化させたこの1年。お陰様でたくさんのチャレンジに恵まれました。

 

テレビ・ラジオへの出演、YouTube配信イベントのファシリテーター、ウェブメディアでの連載、週刊誌記事の執筆、医学専門誌での編集幹事など新たな挑戦を多方面でさせていただき、引き出しが増えたなあと思っています。

 

ありがたいことに、前職場NHKでの仕事もいくつかいただいています。職員証を返納してから1年もたたずADカードをもらって放送センターにピッと入館できるようになったとき、自分のことながらウケる!!と笑いましたww公共メディアの職員の立場から離れても、公共への想いは変らない、ということなのかもしれません。

 

「会社の給料とは別に、個人の活動だけの収入でも、ある程度の生活はできる目途を立てる」という転職時に何となく持っていた目標も、なんとか1年目においては果たせたようです。有難いことです。

 

直近も教育雑誌での連載や、メディアへの出演含めて新たなお話をいただいております。本当に有難いことです。①③の活動とのバランスを上手にとりつつ、1ミリでも誰かの幸せのお役に立てる引き出しを増やすべく、がんばっていこうと思っております。

 

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③団体代表としての活動:一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会

 

2016年に勢いで立ち上げてしまったメディ勉。「メディアや医療者や当事者支援者という立場を超え、医療健康情報の質を高めるために学びあう場を創る」をミッションに、仲間に支えられて活動を続けてきました。

 

2021年は創立から目標としていた、「発信者会員(有料会員)100人」を達成し、組織として帰属意識をもってくれている事務局メンバーも増えてきたと感じています。みんな、本当に有難う。感謝しております。

 

2020年に引き続きコロナ禍に襲われた2021年。メディア関係者向けオンライン勉強会は7回実施し、のべ700人以上のみなさまに集まっていただきました。特に、地方紙や地方テレビ局など、これまでリーチすることが難しかった方々が参加下さったことが嬉しいことでした。大都市圏と地方圏の情報格差の縮小という意味で意義ある変化だと思っています。

 

そのほか、医療健康情報の伝え手を育成する「伝え手育成プログラム」や、豪華すぎるゲストを迎えた「伝え方サミット2022」など、5年前には想像も出来なかった形での取り組みが出来ました。活動を支援下さっている発信者会員・法人会員のみなさま、そして支援いただいている株式会社スローニュースの皆様に心から感謝します。

 

そして2022年を迎え、団体としていま、新たな挑戦を始めようとしています。

 

コミュニケーション・ディレクターとして名高い佐藤尚之さん、国立がん研究センターがん情報サービスの尊すぎる取り組みを主導する若尾文彦さん、ご存知ヤンデル先生こと市原真さんと共に、医療コミュニケーションにおける新たな動きを作ります。

 

毎週定例ミーティングを開きながらコンセプトを詰めていますが、その議論自体が、対談本として出版したいほどの濃い内容と気づきにあふれています。早くこの内容をみなさまに共有したい!ということで、4月には正式発表できるよう準備を進めていますので、ご期待ください!!!!

 

というわけで、長文失礼しました。

リアルの場はもちろん、FBやTwitterでつながり、気にかけてくださる皆様に感謝しています。

 

皆様のおかげで、わたくしめは生きております。大好きです。

なんだか、とっ散らかったやつだな~と思われるかと思いますが、どうかお見捨てにならず。
45歳を迎える2022年も、ワクワクしながら挑戦を続けたいと思っていますので、仲良くしてやってください😊

 

mamoruichikawa.info

正式発表されました。NHKガッテン!最終回。。。

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毎日新聞サイトより

正式発表されました。NHKガッテン!最終回。。。

いま、ぼくが何だか偉そうに、「医療の『翻訳家』」とか名乗っていろいろやらせていただいているのも、すべてこの番組のディレクターとして、デスクとして積んだ経験が礎になっています。

クッソ長いですが、思い出話をさせてください。

 

 

ガッテンは、1つの番組に、テレビの世界では異例ともいう長い時間をかけます。だいたい1つの番組の制作に3~4か月、場合によっては半年かけることもあります。そのハイライトが、スタジオ収録日です。

 

ディレクターだったころの自分。

 

朝にスタジオに入って出し物をチェックし、位置決めをして、カメラ割をして、食堂で食事をとる。そのなかでもドキドキが止まりません。司会である「師匠」こと立川志の輔さんに、初めて内容をお見せするリハーサルが待っているからです。
必死で書き上げた台本で内容を説明する、ヒリヒリする時間。ぐっと沈黙の時間があった後、だいたいの場合は、師匠はこう言います。

 

「全くわからん」

 

顔面蒼白で言葉を失いそうになりながら、でも、「じゃあ、どうするか」を必死で頭をひねって提案する。

 

でも師匠はただ、どうすれば最大級にお客さんに届くのか、そして役立ったと思えるかだけを考えているので、なかなか納得してはいただけません。

 

リハーサル後、本番までの2時間。

 

議論の中で、当初の台本の順番はすべて入れ替わり、箇条書きのメモだけが作られます。そして、本番がスタートします。

 

そう、ガッテンは本当に、「台本のない」番組でした。

 

ゲストに台本を渡さないなんてのは当然で、スタッフやアナウンサーも台本を持っていない。いや、台本はあるのですが、それがその通りなのはリハーサルまでで、本番はもう役に立たなくなっている。なので、技術さんもスタッフも誰も読んではいません。
収録本番が始まったら、常に緊張が続きます。

 

進行する師匠の姿を見ていると、事前の打ち合わせではここではまだ説明を続けているはずなのに、なんか動きがおかしい。

 

インカムでスタッフみんなに緊急連絡。

 

「師匠、ガッテンしちゃうかもしれません」

 

本来、スタジオ撮影というのは、筋書きがないところで何かが起きることを想定していません。カメラは一瞬で動けるわけでないので、思わぬところで思わぬことが起きると、取り逃してしまうかもしれないからです。

 

なのでこれは本当に緊急事態。

 

でもカメラ、副調、フロアのみんなが一つの生き物のように動き出し、師匠の突然の動きをちゃんとカメラにおさめる。

 

その安心感があるからこそ、師匠も自由にその時感じたことを言葉にできる。

 

見てくださっているお客様に満足していただき、1ミリでも幸せになっていただく。そのことのために皆が力をあわせる。

 

そんな、家族のような戦友のようなチームがありました。

 

そんなチームが存在しえたのも、厳しいけれど本当にあたたかい、志の輔さんのお人柄があったからこそ。

 

ぼくのような出来の悪いスタッフにも声をかけてくれて、転職したのちも電話をくれて、「なんだ、あのクラウドファンディングっていうのか、どうやって寄附したらいいんだ」なんて言ってくださる人です。

 

私にとって落語家さんの呼称としての「師匠」ではなく、勝手にですが、自分にとっての表現の「師匠」と考えている人です。

 

なんかぐちゃぐちゃになってしまいました。感慨無量。

 

しかし、物事には始まりがあれば終わりがあるもの。そして終わりは次の始まりでもあります。

 

志の輔さんが伝えてくださったものを、僕なりに、いまいる立場で社会のお役に立つように活かす。
そのことが、ガッテンの諸先輩同僚後輩スタッフ関わったすべてのみなさんと師匠のご恩に報いることと思います。

 

来週水曜日
2月2日が最終回です。
正座して見ます。

www9.nhk.or.jp

2022年のご挨拶

 

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わたくし、ちょうど1年前になりますか、在職20年目にしてNHKを卒業いたしました。

 

そして新天地READYFORで学び直し(リスキリング)の機会をいただき、自分の弱さや至らなさも痛感しもがきつつ・・・まあ何とか、自分なりの価値を発揮できる方法を見出しつつあるかなーと感じ、楽しくやっております。

 

未経験の状況に出会ったり、自分のポジションを超えた関係性の人と知り合う機会があるのは、何歳になったって、とてもワクワクすることであります。

 

そんな最中ですが、おかげさまで前職場にもおつながりをいただき…、(土日祝日を利用した副業として)NHKでも仕事をすることになりました。

 

旧デザインのなかで卒業してしまった人間として、このデザインのADカードを得られるとは思いもしませんでしたww

まあ、いろいろあるけれど

 

こんなゴミカスに声をかけてくださる人がいることを、自分の最大の財産として。
2022年も頑張っていきます😊

認知症の新薬とされるアデュカヌマブ、再審議となりました。

認知症の新薬とされるアデュカヌマブ、再審議となりました。新しい臨床試験の結果が出るのには長い期間と、厳しいハードルが待ち受けます。


「承認」とも「非承認」とも判断を示さない、いかにも日本らしい結論とは思いますが、個人的には妥当な落としどころではないかと思っています。ご関係のみなさまの真摯な判断に敬服いたします。

新しい薬を待ち望む人やご家族がいて、その思いに答えようとして死ぬ気で頑張ってきた人がいて。そのすべての想いが尊い。。。と思うのですが。
しかし、その思いの尊さを真実、大切だと思いつつ、だからこそ、この結果で承認申請するのは生煮えだったと思います。

その段階の結果を、勢い込んで報じてしまったりした、すべての人に責任があると思います。2年前に自分が書いた記事を、再掲いたします。

ーー

今回の開発中止のニュースを目にして、私は15年ほど前に、ある医療関係者と交わした会話を思い出しました。

 当時、アミロイドベータ仮説に基づく研究が進み、次々と根本治療薬の候補が開発され、いくつもの臨床試験が世界中で始められつつありました。

 「アミロイドベータ仮説が出てくるまで、老年期のアルツハイマー病は、病気というより『老化現象の一種』だと思っていた。治療するなんて『老化を食い止める』みたいな、ありえないことだという気持ちだったよ。 でも、時代は変わった。認知症は老化現象ではなく病気、しかも『完治できる病気』になっていくんだ。」

 私は大きくうなずき、医学の進歩のすばらしさに胸を躍らせたのを覚えています。

 以前は「痴呆(ちほう)」とも呼ばれていた認知症。いちど発症すれば手立てはなく、絶望だけが待っていると恐れられていました。アミロイドベータ仮説の登場により、認知症のイメージは「撲滅しうる病」に変わり、希望が生まれたといえるかもしれません。

 しかしそれから15年、当時多くの関係者が夢見た未来予想図は、いまだに実現していません。

 その一方で認知症を抱える当事者からは、認知症を予防や治療によって「撲滅しうる病」とする考え方が強まりすぎると、当事者を社会から「見えない存在」として排除する空気が生まれかねない、という危惧が指摘されるようになっています。

 では、どうしていけば良いのか。

 いま世界的に進んでいるのは、認知症の「撲滅」を目指すのではなく、どうしたら「認知症になってからも安心して暮らせる社会」を作れるのか?について考えようとする取り組みです。

 介護の方法や支援のやり方を工夫し、認知症によって起きる様々な状態の変化に対応できる環境を作ることで、本人や支える人の生活の質を維持しつつ、社会として持続可能な仕組みを整えようとする取り組みが国内海外を問わず進められつつあります。

 将来的に開発されるだろう「根本治療薬」も、「認知症に対応できる社会」を作るための手段のひとつとして、必要な人に必要なタイミングで使われる、というものになっていくのかもしれません。

 「対応不能な絶望」から「撲滅しうる病」へ、そして「対応可能な状態の変化」へと、認知症へのイメージは、この20年ほどでも目まぐるしく変わっています。

 それは、医療の進歩による「長命化」を達成した人類が、それゆえに直面することになった「認知症」という状態への本質的な理解を深め、受け入れようとする過程そのものなのかもしれません。