医療の「翻訳家」を目指して【市川衛】

医療・健康の難しい話を、もっとやさしく、もっと深く。

正式発表されました。NHKガッテン!最終回。。。

f:id:mam1kawa:20220126234916j:plain

毎日新聞サイトより

正式発表されました。NHKガッテン!最終回。。。

いま、ぼくが何だか偉そうに、「医療の『翻訳家』」とか名乗っていろいろやらせていただいているのも、すべてこの番組のディレクターとして、デスクとして積んだ経験が礎になっています。

クッソ長いですが、思い出話をさせてください。

 

 

ガッテンは、1つの番組に、テレビの世界では異例ともいう長い時間をかけます。だいたい1つの番組の制作に3~4か月、場合によっては半年かけることもあります。そのハイライトが、スタジオ収録日です。

 

ディレクターだったころの自分。

 

朝にスタジオに入って出し物をチェックし、位置決めをして、カメラ割をして、食堂で食事をとる。そのなかでもドキドキが止まりません。司会である「師匠」こと立川志の輔さんに、初めて内容をお見せするリハーサルが待っているからです。
必死で書き上げた台本で内容を説明する、ヒリヒリする時間。ぐっと沈黙の時間があった後、だいたいの場合は、師匠はこう言います。

 

「全くわからん」

 

顔面蒼白で言葉を失いそうになりながら、でも、「じゃあ、どうするか」を必死で頭をひねって提案する。

 

でも師匠はただ、どうすれば最大級にお客さんに届くのか、そして役立ったと思えるかだけを考えているので、なかなか納得してはいただけません。

 

リハーサル後、本番までの2時間。

 

議論の中で、当初の台本の順番はすべて入れ替わり、箇条書きのメモだけが作られます。そして、本番がスタートします。

 

そう、ガッテンは本当に、「台本のない」番組でした。

 

ゲストに台本を渡さないなんてのは当然で、スタッフやアナウンサーも台本を持っていない。いや、台本はあるのですが、それがその通りなのはリハーサルまでで、本番はもう役に立たなくなっている。なので、技術さんもスタッフも誰も読んではいません。
収録本番が始まったら、常に緊張が続きます。

 

進行する師匠の姿を見ていると、事前の打ち合わせではここではまだ説明を続けているはずなのに、なんか動きがおかしい。

 

インカムでスタッフみんなに緊急連絡。

 

「師匠、ガッテンしちゃうかもしれません」

 

本来、スタジオ撮影というのは、筋書きがないところで何かが起きることを想定していません。カメラは一瞬で動けるわけでないので、思わぬところで思わぬことが起きると、取り逃してしまうかもしれないからです。

 

なのでこれは本当に緊急事態。

 

でもカメラ、副調、フロアのみんなが一つの生き物のように動き出し、師匠の突然の動きをちゃんとカメラにおさめる。

 

その安心感があるからこそ、師匠も自由にその時感じたことを言葉にできる。

 

見てくださっているお客様に満足していただき、1ミリでも幸せになっていただく。そのことのために皆が力をあわせる。

 

そんな、家族のような戦友のようなチームがありました。

 

そんなチームが存在しえたのも、厳しいけれど本当にあたたかい、志の輔さんのお人柄があったからこそ。

 

ぼくのような出来の悪いスタッフにも声をかけてくれて、転職したのちも電話をくれて、「なんだ、あのクラウドファンディングっていうのか、どうやって寄附したらいいんだ」なんて言ってくださる人です。

 

私にとって落語家さんの呼称としての「師匠」ではなく、勝手にですが、自分にとっての表現の「師匠」と考えている人です。

 

なんかぐちゃぐちゃになってしまいました。感慨無量。

 

しかし、物事には始まりがあれば終わりがあるもの。そして終わりは次の始まりでもあります。

 

志の輔さんが伝えてくださったものを、僕なりに、いまいる立場で社会のお役に立つように活かす。
そのことが、ガッテンの諸先輩同僚後輩スタッフ関わったすべてのみなさんと師匠のご恩に報いることと思います。

 

来週水曜日
2月2日が最終回です。
正座して見ます。

www9.nhk.or.jp